既報の通り、2016年11月10日に開催された第2回未来投資会議において、今後10数年にわたる医療介護の政策変更の大まかな方向性が決定した。medit.techでは、医療介護関係者、事業者の方々の事業企画や研究企画の参考にしていただくべく、公開されている議論内容について補足情報も織り込みつつお伝えする。
前提の認識は人手不足=ICT導入で解決
10日の会議には、部会である「構造改革推進徹底会合」の翁百合会長(日本総研副理事長)、高橋泰副会長(国際医療福祉大学教授)が取りまとめた資料が提出され、これを踏まえた議論が行なわれた(詳細な自由討論の部分は議事録公開前のため不明)。ここには10月に行なわれた部会の議論の流れが集約されている。
資料は4ページに集約され、2ページ目の「基本的な考え方」には、
【解決の方向性】
● 予防・健康管理と自立支援に軸足を置き、現場の負担軽減とモチベーション向上を図りながら、持続可能で質の高い医療・介護を実現。
● データ分析、ICT、AI、ロボット等の技術革新を最大限活用し、限られた人員でも質の高い医療介護サービスの提供を可能に。
と特記されており、人手不足への解決となる質の改善にはICT導入が不可欠との認識が窺える。基本的にすべての資料においてその認識が反映されていて、医療介護の政策提言でありながら、ICT関連の記述が非常に多い。今後機器の導入を検討する際や企画する際には、ほぼ必ずIoTであったり、得られるデータをきちんと評価できる仕組みをもったものが求められていくと思われる。
ICT導入=「データの利活用基盤の構築」と定義。しかし工程上の疑問も?
次のページは、健康・医療分野について述べたもの。各個人の健康・医療データが収集・活用されることが革新的技術革新には必須であり、そのために利活用基盤の構築が不可欠とした。これも既報の通り『PeOPLe』構想を暗に示していると思われるが、注目すべきなのは「2020年度には本格稼働させるべき」としている点。仕様や運営主体、データのフォーマットなども定まっていない中、現実的にこのスケジュールで稼働させるには相当な無理がある。しかしそれでも窺えるのは、そのための動きが急速に加速することだ。今後2-3年は、まずはデータ基盤に関する官民両方の議論や協働の動きが盛んになるだろう。
2018年以降の診療報酬改定の動きも規定か
資料の右側にはかなり具体的な記述が入ってくる。
・2018年度診療報酬改定で、遠隔診療の場合の 報酬上の評価を、対面と同等に扱う範囲を大幅に拡充 する方向で検討する
・2020年度診療報酬改定時に、以下について、 報酬での評価や人員・施設基準での対応を実現。– エビデンスある遠隔診療は、原則、対面診療と同等に報酬上評価 – AIによる診療支援を評価
– データに基づく人員基準の柔軟化を認める
これらのために、研究支援を本年度より重点化すべきと記載されているが、あと4年でエビデンスを担保できる新規の研究が完了し、診療報酬上に反映できるかはかなり厳しいスケジュールであり、しかもこの資料上では、その前の2018年度には見切り発車であっても、遠隔診療の診療報酬評価を拡充すると解釈することも可能な文面になっている。
今後各省庁へこの決定が下りていき、具体的には中医協等で具体論が煮詰まっていくことになるが、スケジュールが区切られた中でどこまで医療安全を保ちながら技術革新を実装できるのか、かなり高いハードルが設定されたのではないだろうか。
次回は介護分野についてレポートする。