「心臓シミュレータ」実用化研究開始 ペースメーカー治療の事前評価を実現へ

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医療機器製販のPIAは、東大発ベンチャーのUT-Heart研究所、富士通株式会社と共同で、心臓シミュレータを活用した新たなプログラム医療機器開発に関する共同研究契約を締結した。CT画像などの臨床データを入力することで、個人の心臓の動作を精密に再現できる「心臓シミュレータ」を活用し、様々な分野での実用化研究を行う。

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スーパーコンピュータが実現した「個人の心臓動作の忠実な再現」

3社が開始するのは、理化学研究所と東京大学らが開発し、UT-Heart研究所が権利を持つ「心臓シミュレータ」技術を活用する実用化研究だ。「心臓シミュレータ」は2016年までスーパーコンピュータ「京」を活用した国家的研究プログラムで技術開発されたもので、心臓を約17万個の微細な四方体に分割し動きを演算、CTデータなどの個人の臨床データを投入し解析させれば、コンピュータ上で個人の心臓動作を忠実に再現できるという、世界的にも注目された画期的な技術。

3社が公開した動画より

今回3社はこの「心臓シミュレータ」を使い、まずは3分野についてプログラム医療機器の実用化に向けた研究を行うが、そのうちもっとも画期的で期待されるのが「CRTシミュレーション事業」だ。CRT(心臓再同期療法)はペースメーカーを体内に埋め込む外科手術が必須だが、施術した症例の約30%についてあまり効果が見られていないのが実状で、現在、医師と患者はそのリスクを甘受しながら治療に向かっている。もし、この心臓シミュレータを活用しペースメーカーを埋め込んだ後の動作を予測できれば、術前に治療効果を評価でき、不首尾に終わる治療を事前に中止できる可能性がある。

次に有望だと見込むのが「先天性心疾患の外科シミュレーション事業」。例えば乳幼児の心臓はとても小さく、先天性ともなれば複雑で特別な構造になっており、さらに症例が豊富とはいえないため専門医でも術技に熟練することは難しい。そのため術前に治療効果を正確に予測することが難しいという課題がある。心臓シミュレータは個々の患者の心臓を高精度に再現でき、術後の予測も可能なためこれらの課題を解消できる。

3社はこの他にシミュレータを使って生成したデータで医学教育にも貢献できると考えており、まずはこの3分野での実用化を探索する。さらにこれらは出発点であり、今後様々な心疾患に対応することで、日本発の技術で世界のデジタル医療を加速させたいとしている。