DNAを切断しないゲノム編集技術、事業化探る 神戸大発ベンチャー、海外系VCから資金調達
2017年7月14日、神戸大学は、同大学発ベンチャー企業「バイオパレット」が米国系ベンチャーキャピタル2社から合計4億円の資金調達を実施したと発表した。同社は2016年8月に発表された、DNAを切断することなくゲノム編集が行なえるとする技術「Target-AID」の実用化を担うベンチャー企業で、今後は資金を活用し、研究室の新設や提携企業との事業化を目指す。
日本発のゲノム編集技術、バイオ企業等との提携模索へ
「Target-AID」技術は、神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科の西田敬二教授・近藤昭彦教授と、東京大学先端科学技術研究センターの谷内江望准教授、静岡県立大学食品栄養科学部環境生命科学科の原清敬准教授らの研究グループが開発した新しいゲノム編集技術。先行している技術として「CRISPR/Cas9」があるが、この技術がDNAを切断した上で、その修復時に目的の遺伝子の改変を期待するものであるのに対し、「Target-AID」は別の機序を用いることでDNAの切断をせずに、目的の遺伝子の改変を高確率に行なえるとする。DNA切断時に懸念される細胞毒性(細胞に対して死や機能障害等の影響を与える性質)の発生リスクを乗り越えるものとして注目されている。
神戸大学はこの技術の実用化のため、2017年2月に「バイオパレット」社を設立。開発者の1人である西田敬二教授が取締役を務めている。この5月に、エイトローズベンチャーズジャパンとF―プライムキャピタルパートナーズから合計4億円の資金調達を行なった。両者とも国内外のヘルスケア、バイオ企業への投資実績が豊富なVC。今後は調達資金を活用し、まずは神戸市内のポートアイランドで展開されている「神戸医療産業都市」エリア内に研究所を新設する。同時に知財戦略を進め、特許化を行ないつつ、国内外の企業、特に農作物の改良や創薬などで海外企業への技術供与も視野に事業化へ注力する考えだ。