「説明可能なAI」を用いた神戸市民38万人の要介護リスク予測研究、神戸大学と日立が開始
神戸大学と日立製作所は21日、神戸市が構築した市民の健康・医療情報を利用できるシステムを活用した取り組みとして、AI(人工知能)を用いた要介護リスクの解析研究を行うと発表した。研究に投入するAIは、日立が特許取得済みの「解析根拠を提示できる」アルゴリズムを持っているため、ヘルスケア関連で求められる説明性の確保にも応えられるという。
神戸市内の高齢者38万人のデータを長期解析
今回研究に取り組むのは、神戸大学大学院医学研究科地域社会医学・健康科学講座 AI・デジタルヘルス科学分野の榑林陽一特命教授らと日立製作所の研究チーム。神戸市では超高齢社会を迎え、市町村一体となった高齢者の保健事業、介護予防事業の実施を推進するため、平成27年度から令和元年度までの計5年間の介護保険被保険者の医療・介護データなどの連結データセット(約3000項目/人)を、神戸市より同大学に提供している。データ提供は令和6年度まで継続し、最終的に計10年間の連結データセットが提供される予定で、研究チームはこれを共同研究契約を結んだ日立製作所とともに解析し、個々人の要介護リスクを提示できるか研究を行う※。研究対象は65才以上の神戸市民38万人の医療情報、介護情報、健診情報などを連結した継時的データセットで、このような政令指定都市規模の大規模なコホートを対象に実施される要介護リスクの解析研究は本邦初だという。
研究には、日立製作所が独自開発したAI技術が活用される。同社によると、深層学習モデルをベースとしたものだが、従来は困難だった「予測に寄与する要因の抽出」を行うことができ、特許取得済みの技術により予測要因を生成した根拠データまで遡ることができるため、高い予測精度とその根拠の説明性を両立させることが可能だという。既に医療、創薬分野で「バイオ探索サービス」などで実績もある技術だとしている。研究成果として開発される「要介護リスク個別予測モデル」は神戸大学から神戸市に提供され、神戸市の保健・介護政策づくりに活用される予定。
※ 神戸大学の説明によると、データはまず神戸市において個人や住所が特定されることのないよう匿名化され、神戸大学に提供される。さらに神戸大学において希少疾患などから個人が特定されることがないよう、同じ特徴を持つ人が10人以下のデータ項目を削除するという再匿名化を実施する。