てんかん発作を自動検出するAIの開発に成功、検出精度は最大100%

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2019年1月31日、東京大学先端科学技術研究センター、自治医科大、NICT(情報通信研究機構)らの研究グループは、 脳波からてんかん発作を自動検出できる人工知能の開発に成功したと発表した。検出精度は既存のソフトウェアを大きく上回り、10 秒単位で発作の検出を試みた場合、検出精度の央値は100%だという。

脳波データを画像化しAIに投入

開発に成功したのは、東京大学先端科学技術研究センターの高橋宏知准教授、自治医科大学脳神経外科の川合謙介教授、情報通信研究機構脳情報通信融合研究センターの篠崎隆志研究員らの研究グループ。てんかんの診断には脳波検査が欠かせないが、これらの診断は専門医の専門知識と経験に加え、膨大な検査データの精査に長時間を要する。負担軽減のためにも、脳波からてんかん発作を自動検出できる、精度の高い新たな手法が強く求められているという。

プレスリリースより

研究グループはこの課題解決のために、脳波データを画像に変換し人工知能に学習させることを試みた。東京大学医学部附属病院とNTT 東日本関東病院で、ビデオ脳波モニタリング検査を実施した24名のてんかん患者の脳波を解析対象とし、これらの検査データから作成した脳波画像を既存の深層畳み込みニューラルネットワークに学習させ、与えられた脳波画像にてんかん発作が含まれるか、または含まれないかを識別させた。1秒ごとに脳波を画像化したところ、 てんかん発作の検出精度は74%で、市販ソフトウエア(20%と31%)を大きく上回った。また10 秒単位で発作の検出を試みた場合では、検出精度の中央値は100%(24名中20名で100%)で、こちらも市販ソフトウエア(73.3%と 81.7%)を上回った。誤検出率は0.2 回/時間(5時間に1回程度)。さらに、体動や咀嚼時に現れるノイズが混入するような紛らわしい脳波でも正しく識別できたという。

(プレスリリースより)

研究チームでは、将来的には、脳波判読の初学者用の教材としての利用や、てんかん発作検出後に脳を直接電気刺激して発作を制御する治療法の要素技術としての利用も期待されるとしている。この成果は2019 年1月22日付で「NeuroImage: Clinical」に掲載された(Accepted Manuscripts 版)。

 

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