名古屋大の研究チームが「30分後の低血糖」を予測するシステムを開発

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名古屋大学大学院工学研究科の新津葵一准教授らの研究グループは、測定した血糖値データのみで30分後の血糖値を予測するシステムを新たに開発したと発表した。予測値により低血糖になる可能性がある場合はアラートを出すという。

2,000件のデータから低血糖を予測、精度71.8%、感度73.9%

糖尿病治療や予防においては、患者自身が血糖値を持続的に把握し、インスリンの投与によって制御することが重要となっている。制御のためには血糖値予測が必要だが、既存製品は糖分やインスリン摂取量の手動入力を必要としており、利便性向上が求められているという。

研究グループは今回、人工知能技術の一種である機械学習を用い、測定した血糖値データのみによって30分後の血糖値を予測するシステムの開発に成功した。

プレスリリースより

名古屋大学が持つ2,000件の時系列に並んだ血糖値の測定データ(1週間分のデータに相当)を、機械学習の一手法であり、時系列データの解析に有利であると言われるリカレントニューラルネットワークの一種、LSTM(Long Short Term Memory:長期短期記憶)で解析。過学習を防ぎながら、低血糖のカットオフ値である70mg/dlを基準として、30分後に下回ることが予測できるかを研究した。

結果、2,000件のデータに含まれていた低血糖イベント22件のうち17件の検出に成功。精度71.8%、感度73.9%の値が得られた。このシステムは、稼働中に学習と予測を交互に行うことができさらに精度を上げることが可能だという。研究チームでは本研究成果により、利便性の高い血糖値予測システムの実現が期待されるとしている。

研究成果は、平成31年3月20日(日本時間7時)開催の国際会議IEEEAICAS 2019で発表された(リンク先のプログラムの19ページを参照)。

涙液から血糖値を計測するスマートコンタクトレンズの開発も成功

(2018年10月のプレスリリースより)

なおこの研究チームは2018年10月に、発電・センシング一体型血糖センサー(発電とセンシングを同時に行うセンサー技術)を開発し、外部からの電気供給を必要としない持続型血糖モニタリングコンタクトレンズを試作。動作実験にも成功しており、今後はこのデバイスを活用する、統合された血糖モニタリングシステムの完成を目指している。

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