岩手県のIT企業が、Apple Watchで取得するバイタル情報をほぼリアルタイムでiPhoneに送信することで遠隔地からの見守りに役立てるシステムを開発し、11日から販売を始めた。また同時に、宿泊療養、自宅療養する陽性者の管理者向けに多人数のバイタル情報を同時に把握できるツールも発表。両システムの同時稼働で、医療関係者と家族が感染者の情報をリアルタイムで共有できるという。 外出時でも情報把握可能、緊急時の通知機能も実装 Apple WatchとiPhoneの連動性を活用した見守りシステムが登場した。11日、岩手県のIT企業「AP TECH」が販売開始した「Hachi」は、Apple Watchが取得する情報(心拍数、心拍変動数、活動歩数、位置情報、Apple Watch電池残量)をほぼリアルタイムに遠隔地にあるiPhoneに送信するシステム。 ウェアラブル端末を活用することで、見守り対象者がどこにいても情報を把握できる。加えて、体調急変や転倒で動悸が激しくなったりした際にApple Watchが検知する「安静時の高/低心拍継続※」の家族への通知や、対象者がApple Watchに指を5秒載せれば発出できるSOS発信機能も搭載しており、緊急事態の把握も即時にできるようになっている。 ※運動終了後10分以上が経過した後も、心拍数が設定した閾値を上回るまたは下回る場合 新型コロナ療養者の遠隔モニタリングツールも提供 同社はまた「Hachi」のシステムをベースとした自宅療養・宿泊療養者の遠隔モニタリングツール「Hachi for COVID-19」も発表した。iPadでの利用を想定している。こちらのツールでは、療養者にApple Watchの最新機種Series6を装着させた場合、リアルタイムでの心拍数、歩数、位置情報の自動取得に加え、「血中酸素ウェルネス(Apple Watchが取得する、血中に取り込まれた酸素レベルを示す指標。いわゆる血中酸素濃度)」が取得可能となっている。ビデオ通話もアプリを切り替えずにそのまま可能で、非接触のままで最新バイタルの把握とコミュニケーションが可能だという。体温や血圧についても、Bluetooth対応の機器を併用すればアプリ上で閲覧できる。またこのシステムも、個別に設定できるしきい値(例:体温37.8°C以上、心拍数110以上など)を越えた場合自動でアラートを表示、さらにメールや着信で能動的に知らせる機能を実装している。なおこの情報は「Hachi」をインストールしている家族も閲覧可能で、療養者を医療関係者と家族が同時に見守る体制を組むことも可能だ。 開発・販売する「AP TECH」の大西一朗代表取締役は、これまでAppleやCisco Systemsでキャリアを重ねてきたが、両親の見守りの必要性と、自身が脳梗塞を発症し回復に時間がかかった経験からITを駆使した医療への貢献を構想していたという。実際に母親に対し「Hachi」を使用しており、今後も当事者としての視点も持った取り組みが期待できそうだ。