【編集部コラム】LINEヘルスケアの新方針発表、しかしまだ改善の動きなし

今月3日、LINEヘルスケアに登録している医師が利用者に暴言を行った件で、同社が被害を受けたユーザーに謝罪し当該医師の利用を停止しました。編集部ではこの件に関し、サービスの現状を調査し、当該医師個人の問題だけではなくサービスとして複数の問題があると指摘しました。20日、同社がサービス品質改善のための対応方針を発表、今後取り組むと表明しましたので、発表から6日経った時点でどの程度実現されているのか検証したいと思います。

LINEヘルスケアが発表した対応方針とは

LINEヘルスケアが発表した方針 出典:https://linehealthcarecorp.com/ja/pr/news/2020/5

その前に20日に同社が発表した対応方針を見てみましょう。同編集部が指摘した通り、暴言を行った医師以外にも、複数の医師にプロフィールなどに瑕疵や虚偽の可能性がある記述が見られていましたので、同社としても今後は「医師のプロフィール情報精査」を実施するなどとしています。その他にも、医師の対応品質の定期監査やモニタリングにおけるNGワードの見直しなど行うとのことです。

これが適切に実施されていけば、不自然なプロフィール文言や、対応診療科の多さなど、品質に関する懸念点が解消されていくでしょう。同社ではこれらの方針を今後実施し改善していくとしています。

さて当編集部では、方針発表から6日経ちましたので改善が進み始めるのではと期待し、改めてサービスの現状を見てみました。結論から申し上げますと、現時点(2020年8月26日17時)では、一切改善が見られていません。

あの不自然なプロフィールの医師が、全ての診療科でおすすめのトップ

とある登録医師の経歴(前回コラム時点)
同じ医師の経歴(2020年8月26日時点)

前回のコラムで、LINEヘルスケアの登録医師の中には、顔も出さず名前も名字のみで不自然な文言のプロフィール記述、資格欄には虚偽の疑いもあるなど、複数の医師の情報の信頼性に疑念があることを指摘しました。また典型的な例として「学歴がまともに書かれておらず、内科、小児科、皮膚科、耳鼻科、整形外科と幅広く相談できると書いてあり、豊富な経験を持つ総合診療医かと思わせながらも、経験年数4年のまだ研修医」が存在するとも指摘しました。

今回、再度各診療科の画面などを調査したところ、この「典型的な医師」のプロフィールについて、触法性が容易に疑われる資格面の記述が削除された以外、何も変わっていないことが分かりました。方針発表から6日経ったにも関わらず、まだ具体的な取り組みは始まっていないようです。

驚くべきは「おすすめ」の表示順

同様に前回指摘した、各診療科におけるおすすめ医師の表示順をチェックしました。前回調べたところ、医師の専門性に関わらず、単に回答数の多い医師に重み付けして表示していることが強く疑われました。そして、さきほど挙げたようなプロフィールの怪しい医師に限って上位に表示されていることも指摘しています。

実はその時には特定することが目的ではなかったのではっきり書きませんでしたが、例の「経験年数4年の研修医」が最も回答数が多く、複数の診療科でおすすめのトップでした。医療行為ではない相談とはいえ、4年目といえば研修も半ばの医師、しかもどの大学を卒業したのかまったく書いてない人物が「おすすめのトップ」だったわけです。これでは、とても同社はサービスとして質を担保しようと考えてないのでは?と思わざるを得ない状態でした。

今回改めて現状を見たところ、驚くべき事態になっていました。なんとこの医師が「全ての診療科においておすすめのトップ」になっていました(2020年8月26日17時時点)。はっきり言って事態はさらに悪化しています。

前回も書きましたが、同社のサービスは8月31日まで、経済産業省の「令和2年度補正遠隔健康相談体制強化事業」に採択されています。つまり今月内の全ての相談にかかった費用はすべて国が肩代わりすることになっています。そしてその費用の算出根拠の主な項目は、間違いなく相談受付数でしょう。LINEヘルスケアはこのようなかたちで「稼いだ数」を、国に請求するつもりなのでしょうか?

同社には今後も、本当にサービス品質の担保を進め、かつ適正に国に対し費用請求を行う気があるのか、説明責任が存在し続けると感じます。当編集部もウォッチし続けたいと思います。