医療情報閲覧の患者同意、プロセス緩和の方向でルール作りへ 健康・医療・介護情報利活用検討会
厚生労働省は29日、「健康・医療・介護情報利活用検討会」の会合をオンラインで開き、各ワーキンググループでの議論経過を確認した。まもなく開始となる患者の電子カルテ情報などの全国的共有の仕組みや、電子処方箋のリフィル対応予定時期についての方針、基本的に了承されている。
「6情報、2文書」閲覧の患者同意 「同意前提の見直し」でルール作りへ
政府のデータヘルス改革の一環で、従前よりマイナポータルを介して患者自身が「特定健診」「薬剤情報」「診療情報」を閲覧でき、また医療機関・薬局がAPIを介してそれらを取得できるようになっているが、今後共有できる内容が以下の電子カルテ情報へも拡大される。
医療情報
「傷病名」「アレルギー情報」「感染症情報」「薬剤禁忌情報」、「救急時に有用な検査情報、生活習慣病関連の検査情報」「処方情報」 =いわゆる6情報
文書情報
診療情報提供書、退院時サマリー =いわゆる2文書
情報閲覧にあたっては機微情報であるため患者自身の同意を得ることになっているが、この日の会合では、森田朗座長(東京大学名誉教授)が(同意対象が増えることで)医療従事者の負担になっているほか、患者自身が同意について判断することが難しい場合もあり、同意を得られない場合、患者が不利益となる可能性もあると発言。患者同意が前提となっていることについて問題提起し、同意を前提としない代わりに、利活用における信頼性を担保する別の仕組みを作るべきとの見解を示した。
これに対し印南一路構成員(慶応大総合政策学部教授)は賛成を表明し、山本隆一構成員(医療情報システム開発センター理事長)も賛成しつつ、個人情報保護法を乗り越える法整備が必要になるとして議論を深掘りする必要性を述べた。ただ同意の有無に関わらず患者利益を守るための、利用側に対する新たな規制の必要性も訴えた。長島公之構成員(日本医師会常任理事)は、見直しの議論の前に「患者が情報共有する意義やメリットを理解することが前提だ」とし、慎重であるべきとの意見を述べた。
電子処方箋、今秋にもリフィル対応へ
この日の会合ではこのほかに、先頃運用開始された電子処方箋について、最大90日分までの処方を認める「リフィル処方箋」についての対応スケジュールの確認が行われた。厚生労働省が提出した資料によると、今秋を目処にシステム改修を行い、その後地域を限定した先行実証を経て全国導入となる予定。ただし現在資格確認システムやマイナ保険証への対応で各事業者の対応が遅れ気味になっており、その点も考慮した「導入期間の設定」について検討するとしている。