GPUを医療機器に取り込む動き加速か 筑波大が世界最高速のMRIシミュレータ開発

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人工知能(AI)開発を加速させた立役者として「ディープラーニング」の手法が脚光を浴びると同時に、そのエンジンとなる「GPU」も大きくクローズアップされてきている。このGPUをAI開発のみならず、様々なハードウェアへの組み込みを目指す動きが活発化してきた。

筑波大、GPUを活用した世界最高速のMRIシミュレータを開発 その心臓部はNVIDIAのGPU

2017年5月25日、筑波大学数理物理系計測工学教授の巨勢勝美氏とエム・アール・テクノロジーの研究チームは、GPUを用いて、MRIの撮像プロセスを計算機で忠実に再現する世界最高速の MRI シミュレータを開発したと発表した。MRIから得られるデータを撮像するプロセスを「パルスシーケンス」と呼ぶが、この開発に関しては欧米と比べ競争力に劣るとされており、MRI市場の日本メーカーのシェアが15%程度に留まっている一因でもあるという。

研究チームは従来から民生用パソコンを撮像部に用いることで、医療以外へのMRI技術の活用と装置の小型化を研究していたが、2014年よりGPUを活用したMRIシミュレータの開発に取り組んだ。今回、実際に撮像実験に使用するパルスシーケンスがそのまま動作するシミュレータを世界で初めて開発し、研究室で開発した MRI 装置( 1.5T 超伝導磁石使用 ※)と撮像結果を比較したところ、ほとんど遜色ない結果だったという。また動作スピードも世界最高速の実効性能(約 7TFLOPS:従来比約 70 倍)を達成した。

マルチスライス法の撮像結果とシミュレーション結果(ファントム画像)の比較。11 枚の連続する二次元スライスの撮像実験(面内 256×256 画素)を、約 4 億 7000 万個の核磁化を用いたシミュレーションで再現した

さらに特筆すべきは、このMRIシミュレータに使用したGPUがNVIDIA社の「GTX 1080」であることだ(2台使用)。日本のパソコンショップでも販売されている民生用のごく普通のGPUであり、コストも専用品に比べ圧倒的に安い。研究チームは今後汎用的なMRIシミュレータを目指すとしており、撮像部をこうした安価かつ高性能、部品も代替可能なものにリプレースする提案は、今後のMRI開発のパラダイムシフトに繋がる可能性がある。
 

NVIDIAもGPU組込みの可能性に着目
医療機器メーカーへ提案中

NVIDIA社もこうした活用例の蓄積に積極的だ。自動運転の核となる、障害物を認識する画像認識技術の開発をトヨタ自動車と協働で進めているほか、現在販売代理店とともに、医療機器メーカーへのGPU採用を働きかけているという。画像処理においては圧倒的なアドバンテージを持つGPUが、医療機器、特に画像診断の機器の高機能化に寄与するならば歓迎すべき動きだ。

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