経産省主催のビジネスコンテスト、VR活用のリハビリテーション機器が優勝

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2018年1月18日、経産省主催の「ジャパンヘルスケアビジネスコンテスト2018」が東京都内で開催された。事前審査を勝ち上がったベンチャー5社による公開プレゼンテーションが行われ、グランプリにはVRを活用した映像によるリハビリテーション機器を提供する「mediVR」が輝いた。Med IT Techでは5社すべてのプレゼンテーション内容を詳報する。

尿検査で栄養調査、不足がちな栄養素をサプリメントで届ける『VitaNote』

ユカシカド代表取締役 美濃部慎也氏

ユカシカドは、滋賀県立大学人間文化学部 生活栄養学科基礎栄養学・公衆栄養学研究室の福渡努教授との共同研究で、尿検査による体内の栄養状態評価に世界で初めて成功した。この尿検査では7種類のビタミンと6種類のミネラルのほか、たんぱく質と酸化ストレス(ビタミンC)を評価できる。検査制度は健康診断と同等だという。またその結果に基づいて、不足がちな栄養素を補うテーラーメードのサプリメントを定期的に顧客へ配送するサービスも展開し、ワンストップのビジネスモデルを構築している。

美濃部氏は「栄養不足問題は途上国だけの問題ではなく、日本でも高齢者、子どもを中心に存在する。しかしこれまでは栄養アセスメントを行うための適切な検査法がなかった」とし、この尿検査の意義を強調。これまでのサービス利用者の85%に、食事を変更するなどの行動変容が見られたという。また今後、日本だけでも8兆円程度のマーケットサイズが見込めるとして、ビジネスとしての可能性を訴えた。

 

非特定、非言語コミュニケーションで孤独を解消する『OQTA』

OQTA代表取締役の中野功詞氏

近年、さまざまな研究で孤独が心身の健康状態に与える悪影響が明らかになりつつあるが、『OQTA』はその解決ツールとして「1秒の音」を使うという、ユニークなサービスだ。専用のスマートフォンアプリを使い、相手が設置しているデバイス(ベーシックなものと鳩時計型の2つ用意されている)へ、音を届ける。1人の受信者につき8人までの、送りたい人のコミュニティを構成するが、誰が送ったかは分からないようあえて匿名性を保持している。何を話すか考えなくてよく、また誰が送ってきたか分からなようにすることで、気軽に続けられるようにしたという。「(機能を)あえて削って削ってシンプルしたのが強みだ」と中野氏は自信を見せた。

 

重症化予防に特化した『iPREVENT』

PREVENT代表取締役の萩原悠太氏

PREVENTは、2016年7月に名古屋大学医学部発ベンチャーとして設立された。同大大学院医学研究科山田研究室が研究している脳梗塞の再発予防ノウハウをもとに、対象を脳梗塞以外の心筋梗塞や、糖尿病、高血圧症といった生活習慣病全般に広めた重症化予防支援サービス『iPREVENT』を保険者、生命保険会社向けに展開している。萩原氏は「ヘルスケアサービスが盛り上がっているが、すでに発症し治療開始された患者の重症化、再発予防のサービスはまだまだ足りていない」とし、顧客の健康保険組合の医療費データを事例に出しながら「実は組合員の5%が、組合全体の医療費の50%以上を使っている。この傾向は国全体においても言える。つまり医療費の適正化のためにはターゲットを絞った予防策が必須」と、iPREVENTの有効性をアピールした。

 

中小企業のための健康経営プラットフォーム『Carely』

iCARE COOの片岡和也氏

iCAREの提供する『Carely』は、主に中小企業をターゲットとして、従業員の健康管理を促進するための統合的なメニューを提供するサービスだ。健康診断、ストレスチェック、勤怠情報、産業医との面談情報をクラウドにアップロードし自動解析。従業員ひとりひとりの健康状態を「健康ダッシュボード」と呼ばれる画面で一覧できるようにし、企業の担当者がアクションを起こしやすいように情報提供する。また要改善とされる従業員に対しては、チャットで専門家が相談を受け付けるなど介入を行う。「予防のためには会社が従業員に対して行うカンパニーケアと、従業員のセルフケアの両方が大事」と語るCOOの片岡氏は「これまで80社、15,000余りの導入実績を積み重ね、欠かせないサービスとして成長してきている」と自信を見せた。

 

VR技術+AI+デュアルタスクのリハビリ『mediVR』

mediVR代表取締役の原正彦氏

いまリハビリテーションの分野では、歩行訓練が必要な患者が爆発的に増えつつあるが、理学療法士の人手不足で15分間の訓練を実施するのがやっとという状況にあるという。さらにリハビリテーションのノウハウはそのほとんどが属人的であり、可視化されていないため均てん化できない。mediVRではこの課題を、VR技術と3Dトラッキング技術、AIで解決できると考えた。

具体的には、患者さんにVRディスプレイを装着してもらい、理学療法士が考案した、例えば遠くに出てくるボールを手で掴む訓練メニューを映像で見せ取り組んでもらう。コンテンツになっていることで訓練中の動きのデータを記録しAIで解析することができ、ひとりひとりの達成具合に合わせた次のメニューの提示も容易になる。

原社長はmediVRのもうひとつの特徴として「デュアルタスク(二重課題)」をあげた。高齢者が本当の意味での歩行能力を取り戻すためには、歩行できるだけの体幹バランスだけでなく、歩行中に周囲に気を配る認知機能の維持も図らなければならない。mediVRは利用者に対しランダムで対象物を表示することでデュアルタスクを実現し、この要件を満たした。mediVRはこの2つの機能で特許をすでに取得しており、機器の成長性についても「国内については人手不足の理学療法士の代わりとなり得るし、費用を人件費程度におさえられれば相当数の施設が導入する」との予測を披瀝。さらに非言語のコンテンツであることから海外展開も容易だとした。

この知財戦略とスケーラビリティが評価され、グランプリにはmediVRが選ばれた。受賞のコメントを求められた原社長は「日本のプレゼンスをどんどん高めていきたい。私たちはゼロからイチを生み出すことしかできないので、皆様のご指導ご鞭撻をいただいてオールジャパンであたっていければ」と結んだ。

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