スマートフォンに実装可能な眼科画像解析AI を開発、従来手法より緑内障の検出精度向上 東北大

 東北大学の研究グループが、新しいディープラーニングの手法を取り入れることで眼科画像解析AIモデルの劇的な軽量化を達成し、スマートフォンに実装できるようになったと発表した。またこのAIの緑内障の検出精度を検証したところ、従来のソフトウェアより検出精度が有意に向上したという。

AIモデル開発に「チャネルナローイング」を採用、軽量化を実現

 今回の研究成果を発表したのは、東北大学大学院医学系研究科神経・感覚器病態学講座眼科学分野の中澤徹教授、Sharma Parmanand (シャルマ・パルマナンド)准教授、二宮高洋大学院生、東北大学大学院情報科学研究科の岡谷貴之教授らの研究グループ。眼科の検査では、眼底写真と呼ばれる目の奥を映した写真と、光干渉断層計で眼の断面を調べる検査画像が広く用いられている。これらの画像解析を行うAIの構築には、現在、U-Netと呼ばれるようなディープラーニングの手法をよく用いるが、この手法ではいったん特徴を抽出したデータをアップサイクリングするなど容量が大きくなるのが一般的だ。

 研究グループでは今回、モデル構築の手法として「チャネルナローイング」という手法を用いた。これはパラメータの数を減らし判別に必要な特徴のみを保持する構築手法で、従来よりもコンパクトな構造のモデルを作成することができる。U-Netと比較するとパラメータの数は10分の1だという。一般的にモデルの容量と検出能力は正比例する傾向があるが、研究グループで今回開発したAIの緑内障検出精度を検証したところAUC=0.813となり、既存のソフトウェアによる検出精度 AUC=0.776 より優位な結果となった。

 研究グループではこのモデルを活用し、緑内障をはじめとした眼の病気を、受診前にスマートフォン等で自己検診することで早期発見、早期予防ができるような社会実装への応用が期待できるとしている。

※ 光干渉断層計: 照射光と反射光の干渉を利用することで網膜など眼の断面を 非侵襲的に高い分解能で可視化することができる検査機器。

論文リンク:A lightweight deep learning model for automatic segmentation and analysis of ophthalmic images(Scientific Reports)