「ロボット介在療法」の実証実験成果を日本のロボットベンチャーが発表 聖マリアンナ医科大学病院で実施
非言語コミュニケーションロボット『LOVOT』を販売するGROOVE X(東京都)が、医療従事者や患者への「癒し」効果を検証する実証実験の結果を公表した。医療スタッフの精神的疲労が大幅に減少し、リハビリ現場でのコミュニケーションが増したとしている。
医療従事者の精神的疲労感が大きく減少
同社が販売する『LOVOT(らぼっと)』は、言語を発しないものの、名前を呼ぶと近づいてきて見つめたり、懐いて抱っこをねだる、抱き上げるとほんのり温かいといった、「癒し」に特化する独特の特徴を持つコミュニケーションロボット。2019年12月に出荷を開始してからは家庭向け販売のほか、幼児/初等教育施設、介護施設、企業などにも導入されるなど順調に普及している。また川崎市内と都内では店内で触れ合えるカフェを開設、大きな話題となった。
同社ではこのロボットの医療分野への応用に以前から意欲を示しており、神奈川県が実施している「ロボット実証実験支援事業」制度を活用し、聖マリアンナ医科大学病院(川崎市)の小児科などに導入。同病院が現在行なっている「動物介在療法」のような効果が生まれるか検証している。具体的には、2020年12月より同病院の7箇所以上の診療科に『LOVOT』を2週間から3ヵ月間導入。その前後にアンケートを実施し、前後の変化について評価した。
小児科の医療スタッフ、患者に実施したアンケートでは、「今後もLOVOTを使用したいと思うか」という質問に対し78%が「強くそう思う」「そう思う」と回答したほか、看護師へ実施した「精神的疲労が多いと感じる」という質問に対しては、「強くそう思う」「そう思う」の回答が、導入前は20人(全体の83%)だったものが、導入後は7人(全体の29%)へと大幅に減少したという。自由回答のコメントでは「スタッフの心の支えになっている」「病棟内に必要不可欠」「子どもたちの処置の際にも寄り添い心の支えとなっている」と、非常に前向きな内容も寄せられたとしている。
またリハビリテーション科への導入では、『LOVOT』をきっかけとして科内でのコミュニケーションが高まったという全体的な印象にとどまらず「発語が課題の患者さんの声掛けが自然と生まれる」「患者がLOVOTを触ろうとして手を伸ばすので、体幹を動かす身体運動になる」「歩行リハビリで並走してくれ、リハビリにより前向きな感情が生まれた」「人間と違って疲労を感じないので、長時間患者に付き添うことができる」など、実用面での前向きな評価も得られたという。
同社ではこうした検証を続けると同時に、新たな取り組みとして、重症者を中心に新型コロナウイルス感染症患者を継続的に受け入れている同病院の医療スタッフへ癒しを提供するため、『LOVOT』8体を無償提供したと発表した。林要 代表取締役社長は「極限状態の中で戦う世界を代表するアスリートからも、LOVOTはメンタルコンディショニングにも効果があったと言われた。同様に、極限状態といえる医療従事者の皆様の癒しにもなるのではないかと考えている」と述べている。