国立長寿医療研究センター、血中マイクロRNAを用いた認知症発症リスク予測モデルを構築

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国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターのメディカルゲノムセンターを中心とした研究チームは、血液マイクロRNA(miRNA)を発現情報を活用した認知症発症のリスク予測モデルを構築したと発表した。

三大認知症の判別に有意な結果

20個前後という少数の塩基からなるマイクロRNA(miRNA)は、人間の体内に2,500種類以上存在するといわれる。遺伝子発現を調節する機能や、細胞間の情報伝達を担う機構に関係することが明らかになり、がんやその他様々な疾患の機序解明、さらには予測、診断の新たなバイオマーカーになるのではないかと期待されている。

メディカルゲノムセンターの研究チームは5,000例近くのmiRNA発現データを蓄積し、様々なデータ解析を行っているが、その中で今回、重水大智ユニット長らは疾患群の絞り込みを行い、認知機能正常高齢者と合わせ1,569人のmiRNAプロファイルデータから、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症(VaD)、レビー小体型認知症(DLB)の三大認知症を一度の検査で判別できるモデルを構築することを試みた。

具体的にはこの三大認知症を含む認知症群と、認知機能正常高齢者群合わせて1,569例の血清を、高感度DNAチップ「3D-Gene®︎」を用い、網羅的なmiRNAの発現解析を行った。得られたデータは、教師あり機械学習手法のひとつである、教師あり主成分分析ロジスティック回帰法(supervised PCA logistic regression method)に応用。予測モデルの構築を試みた。この予測モデルを独立した2つのデータセットで検証した結果、ADを感度93%・特異度66%、VaDを感度73%・特異度87%、DLBを感度76%・特異度86%という値で判別できたという。

MCIに関しては感度100%(症例32例)

図3.予測モデルで用いられたmiRNAのターゲット遺伝子の関係ハブ遺伝子としてEXOC5,DDX3X,YTHDF3を抽出(EXOC5はADと,DDX3XとYTHDF3は脳腫瘍との関連が知られている)

また研究チームでは、軽度認知機能障害(MCI)の段階から認知症に進行する患者を早期に発見することが疾患マネジメント上重要とされていることから、MCI患者(初診時)32例について、初診時採取の血清を用いて認知症への進行予測も試みた。その結果、認知症に進行した10症例を感度100%で、進行しないと予測した4症例を陰性的中率100%で判別することができたとする。また予測モデルで使用されたmiRNAのターゲット遺伝子を調べたところ、EXOC5,DDX3X,YTHDF3といった脳機能との関連が示唆されるものが多く含まれていたことも分かった。

研究チームは、本手法を用いれば、被験者の負担が少なく、施設間差のない定量的な検査が可能となり、これにより

①検査手法の異なる三大認知症の検査を一度の採血で判定でき検査コストを抑制できる
②疾患に適した治療法を早期の段階で選択できる
③MCIの段階で将来の認知症進行予測が可能となり早期介入ができる

などのメリットが考えられるとしている。
今後は認知症体外診断薬化に向け、多施設による検証と性能検査に取り組んでいく予定だ。

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