既存のモダリティへ最新の画像解析環境を NVIDIAの「Project Clara」が提示するものとは
2018年5月9日、NVIDIAは都内で日本の報道関係者向けブリーフィングを開催し、NVIDIAの医用画像解析の今後についてプレゼンテーションした。3月にシリコンバレーで開催された GPU テクノロジカンファレンスにて発表された Project Claraについて、日本で初めて説明がなされた。
GPUの仮想化で既存のモダリティからのアクセスを可能にする「Project Clara」
ブリーフィングではヘルスケア事業担当副社長のキンバリー・パウエル氏が登壇し、「Project Clara」の概要とその目的、今後NVIDIAが目指したい領域について語った。
現在NVIDIAは医用画像解析に関するAI構築の研究分野についてほぼデファクトスタンダートとなっており、日本でも多くの研究機関が同社のGPU環境を活用している。しかし、より臨床に近い領域、既存のモダリティが導入されている領域への浸透は道半ばだ。一般論として現在、全世界の医療機関には約 300万台の画像診断装置が設置されているが、毎年新たに購入されるのはわずか数十万台という事情もある。既存のモダリティは当然ながら、当時のテクノロジーによってその機器内で撮像の画像化などを行うアーキテクチャであることが多いため、ハードウェアを中心としたNVIDIAのGPU環境を取り入れづらい状況にある。
そうした現況に対し、「Project Clara」は、既存のモダリティにもNVIDIAの最新の画像解析環境を提供するために生まれたソリューション。ハードウェアの上層に仮想化されたGPU環境を構築し、画像解析はその環境で行う。仮想化されているため様々なモダリティのデータ(CT、MR、超音波、X線、マンモグラフィなど)を受け入れ、場合によっては同時に解析することができ、ハードウェアと分離されていることから拡張性にも優れているという。リモートや、マルチユーザの利用にも対応している。既存のモダリティからのデータを「Project Clara」を含むNVIDIAのGPU環境で解析すれば、例えば画像撮影による患者の放射線被ばく量が最大90%減少し、MRI画像の取得時間の短縮といった医療上の効果も見込めるという。
「個別化医療への道筋を示したい」
パウエル氏は、今後強化したい領域として創薬分野をあげた。この分野では言うまでもなくゲノム、バイオインフォマティクス、低温電子顕微鏡画像、計算化学、ハイコンテキストスクリーニング、病理画像、放射線画像など、高解像度画像を高度に解析する環境が必須だ。候補物質の探索から個々人の組織の画像解析まで、自社のGPU環境が手がけることで貢献できることは多いとし、個別化医療への道筋を示したい、と語った。