「AI」と「ナノポアセンサ」で、インフルエンザウイルスの高精度識別に成功

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大阪大学産業科学研究所と東京工業大学の研究グループは、2018年11月21日、ナノポアセンサとAI技術を融合させた新しい1粒子検出法を用いて、インフルエンザウイルスの型(A型,B型,A亜型)を高精度に識別することに成功したと発表した。迅速・簡便かつ検査者の能力に依存しないウイルス検査キットへの応用が期待される。

最大で精度95%以上を達成

研究に成功したのは、大阪大学産業科学研究所の川合知二特任教授・筒井真楠准教授・有馬彰秀特任助教(常勤)・鷲尾隆教授と、東京工業大学物質理工学院応用化学系の大河内美奈教授らの研究グループ。

従来、インフルエンザの型判定は、イムノクロマト検査キットに現れるマーカーの有無を、熟練者が目視で判断する形式で行われている。ウイルス数が少ない感染初期段階では判定が難しいだけでなく、判定を行う個人の能力に依存するという課題があった。

ナノポアによるインフルエンザウイルス粒子検出イメージ(プレスリリースより)

今回、川合特任教授らの研究グループは、極薄窒化シリコン膜中に開けられたナノ細孔(ナノポア)※1を通るイオン電流を計測するナノポア法を用いて、インフルエンザウイルスを1個レベルで検出。機械学習によるパターン認識※2技術をイオン電流※3シグナルの解析に応用した。

その結果、インフルエンザウイルス粒子1個で72%、20個以上の検出で95%以上の精度で型判定が可能であることを実証した。これにより、検査者の能力に依存しない、感染初期でのインフルエンザウイルス型判定の実現が期待される。

なおこの研究成果は、英国科学誌「Scientific Reports」に、11月2日(金)(日本時間)に公開されている。

※1 ナノポア
ナノメートル(10億分の1メートル)スケールの細孔。

※2 パターン認識
入力情報をパターンとして蓄積し、新規の入力情報と照らし合わせ、予め定められた複数のクラスのうちの一つに対応させること。本研究では計測されたインフルエンザウイルスのイオン電流シグナルが入力情報に、型がクラスに相当する。

※3 イオン電流
電荷を持った原子・原子団(イオン)の運動によって生じる電流。本研究では、ナノポアを挟んで電圧を印加することで、イオンをナノポアに強制的に通過させる。ウイルスがポアを通過する際、ポア内のイオンはウイルスの体積によって排除されるので、瞬間的にイオンの流れが阻害され、電気的なシグナルとして検出できる。

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