ショートメッセージ送付による睡眠改善効果を証明
不眠症の治療法として有力とされている認知行動療法を、さらに効果的にする新たな手法が明らかにされた。個別最適化された内容のショートメッセージを送信することで、前向きな行動変容を起こせたという成果が、日本の研究グループから発表されている。
CBT-Iプログラムをショート・メッセージ機能追加で拡充
研究成果を発表したのは、京都大学大学院医学研究科の石見拓教授、同大学学生総合支援機構の降籏隆二准教授、沖電気工業、ヘルステック研究所からなる共同研究研究グループ。不眠症の認知行動療法(CBT-I)は諸外国のガイドラインで推奨される有力な治療法のひとつだが、専門家が不足しており提供機会が限られている。ICT技術を用いたCBT-Iプログラムについても対面と同等の効果があることが示されているが脱落率が高く、治療継続のための新たな手法が求められている。
研究グループでは、今回「プロンプト」とよばれるショート・メッセージを利用者が受容しやすいタイミングで送信することで、望ましい行動を誘発するスマートフォン向けの「睡眠プロンプトアプリケーション(SPA)」を開発。このアプリの効果を検証するため、睡眠の問題を自覚する労働者116 名を対象として、4週間にわたって並行群間無作為化対照試験を実施した。介入群に提供されたSPAには、被験者個人の睡眠データ、ライフサイクルなどに合わせて最適化された内容のショート・メッセージを各被験者個別に自動送信する機能が実装されており、主要評価項目として不眠重症度質問票(ISI)、副次評価項目としてチャルダー疲労スケール(CFS) を測定した。
結果、組入時の ISI の平均値は両群ともに 9.2 だったが、4 週間後の平均値は介入群 6.8、対照群 8.0となり、ISI の 変化の違いは統計学的に有意だった (P = 0.03)。ISI 得点が 8 点以上の不眠症のサブグループ解析では、ISI (P = 0.01)、CFS の身体的疲労スコア (P = 0.02) の有意な改善が示された。脱落率は介入群のうち 3.2% だった。
研究グループはこの結果はSPAの有効性を実証するものだとし、今後、年齢層や 文化的背景が異なる被験者を対象としてさらに研究を続ける必要があるとしている。