AIで薬物の副作用予測に成功、14種類で100%の的中率 東大薬品作用学教室

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リリースより:ディープラーニングで抽出された副作用疑いのある薬物

東京大学大学院薬学系研究科・薬品作用学教室は2017年1月30日、ヒトでの薬物のけいれん誘発作用を、マウス脳スライスの実験データ画像から予測することに成功したと発表した。本研究成果は、Journal of Pharmacological Sciences誌(1月28日オンライン版)に掲載されている。

 

臨床前段階の安全性確認にAIを導入

医薬品の開発の必須ステップとして、臨床試験の前段階での安全性確認が行なわれているが、その中で中枢神経系への副作用の予測は難しいとされている。特徴的なけいれん様発射を示すことが分かっており視認することは容易だが、これを数値で定量化・指標化することが困難であるからだ。そこで薬品作用学教室の池谷裕二教授、高夢璇大学院生らは、オープンソースの人工知能ライブラリである「Caffe」を用い、ディープラーニングによる予測の精緻化を目指した。

リリースより:マウスの脳スライスに対象薬物を投入した際の反応を画像化したもの

上記画像のように、それぞれの薬物に対する反応(今回はけいれん様発火)を画像化した上で、画像解析のオープンソースライブラリであるCaffeに投入。ベクトル値として出力させた後、違いを強調するかたちでデータを空間にプロットし、副作用の発生予測を行なった。

14種類の薬物の分散をプロットした結果。けいれん様発射を示した薬物は赤丸で示されている

14種類の薬物の分散をプロットした結果、副作用が予測される薬物とそうでない薬物を分離できる境界線を設定することができた(A)。この境界線による予測は100%の確率で実際と合致し(B)、さらにその境界線を使い別の薬物2種について新たに予測を行なったところ、そちらでも100%の的中率だったという(C)。

 

画像認識における予測実験系を構築、応用も視野に

今回の結果について薬品作用学教室では、「薬品開発の前臨床段階 において、動物試験の代わりに、化合物のけいれん誘発作用を精度よく予測できる手法の一つ となりえる」とし、この研究で用いられた画像認識のモデルは、一般的な実験データ解析にも応用できるとしている。

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