AIを活用した医療従事者向け歩行機能評価アプリを共同開発、回復期病院などでの実証開始
AIを利活用し高齢者医療向けソリューションを主に展開するエクサウィザーズは30日、医療従事者向け歩行機能を評価するスマートフォン用のアプリケーションを開発、 このアプリを活用した回復期病院での高齢者の運動器ケア支援の実証試験を開始したと発表した。
「骨格抽出技術」をベースにAI開発、疾患啓発昨日も実装
超高齢社会を迎え平均寿命と健康寿命の差を縮めることが必要と言われるなか、要介護となる前から支援に取り組む「介護予防」の重要性が高まっている。内閣府がまとめた「令和3年版高齢社会白書」によると、要介護となる要因の中で、関節疾患や骨折・転倒といった運動器疾患が24%を占めており、これらへの予防的アプローチが具体策として研究されている。
運動器の機能の中でも、歩行機能は日常生活の質の維持において中核的指標だが、実際の評価にあたっては理学療法士等による専門的な評価が必要であり、予防的観点から気軽に、頻回利用できる機能評価の仕組みが求められている。そこで、エクサウィザーズは自社の持つ骨格抽出技術を活用し、高齢者の歩行の様子を撮影した動画から歩行速度を含む複数の歩行状態を可視化できるAIアルゴリズムとソフトウェアを開発した。
アプリでは独自のAIアルゴリズムによる歩行機能指標の自動評価・分析、身体の痛み、リハビリテーションやトレーニング結果を記録することができ、それらの可視化を通じて、リハビリテーションやトレーニングへのモチベーションの維持・向上につなげることを狙う。また、歩行機能以外の運動機能評価結果の記録や、フレイルやサルコペニアといった運動器疾患の情報、高齢者のケアを担当する複数の医療従事者間での情報共有機能に加え、AIのアウトプットを用いた「フレイル」「骨粗鬆症」「過活動膀胱」といった、歩行機能との関連が示されている疾患の啓発機能も実装した。高齢者の運動機能ケアに必要な情報を統合的に収集・記録し、関連する疾患における適切かつ適時的な治療の啓発を支援するツールとして活用されることも視野に入れている。
アプリは、アステラス製薬、国立長寿医療センター荒井秀典理事長、順天堂大学・スポートロジーセンターとの共同開発。国立長寿医療研究センター荒井秀典理事長が監修し、エビデンス構築に関しては、順天堂大学・スポートロジーセンターが、文京区在住の高齢者コホート研究(Bunkyo Health Study)における歩行動画を含む幅広い医療データの取得・解析による疾患・機能評価との相関解析や、3Dモーションセンサを用いたAIアルゴリズムの精度検証を実施する。また、整形外科領域のリハビリテーションの支援効果を検証するため、3つの回復期病院においてアプリの実証を行う。