【PR】知られざる病院の「2020年問題」/ある病院の決断を追う①

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あと1年でやってくるもの

病院における2020年問題が存在することはご存知だろうか。
東京オリンピックが来年に迫る中、その開幕とほぼ同時にやってくるそれは、確実に病院の大きな情報インフラに影響を及ぼす。

 三菱総合研究所が行なった全国1,234病院へのアンケートによると、病院内外との連絡用に導入される通話端末としては、いまだPHSが圧倒的なシェアを誇っている。しかしPHSは、20207月末をもって国内業者の通話サービスが完全に終了する。PHS回線網を使った通信サービスに関しては2023年まで運用を続けるが、通話に関しては来年の7月で個人、法人ともに利用できなくなるのだ。つまり病院のPHSは軒並み他の端末への切り替えを余儀なくされるというわけだ。そういう事情もあり、いま、全国の病院では他の端末への切り替えラッシュが始まっている。

 切り替えにあたっては、費用対効果の面からスマートフォンを検討する病院も多い。いまや一定の条件を満たせば院内でもWiFiを使えるようになっており、ネットを使えるスマートフォンなら、通話以外の用途、情報共有等での活用も見込めるからだ。

 とは言っても単なる通話端末だったPHSとは違い、スマートフォンを大量に導入すれば、サポートなどの運用コストが定常的に発生してしまう。同じ体制で端末だけ変えても、十分な費用対効果を生むことは困難だ。しかし、かといって、これまで院内にスマートフォンを大量に導入した実例はまだ少ない。院内の担当者は参考にするものがなく頭を抱えてしまっているのが実情だろう。

 Med IT Tech では、この大きな転換期にある院内端末の選択、運用の参考になればと、まさにこの課題に直面し模索を続ける、とある施設を密着レポートする。

 

過酷すぎた「マイナスからのスタート」

倉敷成人病センター

 その施設とは、岡山県第2の都市、倉敷市にある民間の病院グループ「一般財団法人倉敷成人病センター」だ。前身となるクリニック開設から数えて設立50年を越えるこのグループは、病床269を持つ地域でも大規模な中核病院「倉敷成人病センター」を中心として、地域包括ケアを支えるコミュニティケアセンター「ライフタウンまび」や「倉敷成人病健診センター」、海外の在留邦人向けの施設を複数運営するなど、機微なメディカルニーズに細やかに対応する医療法人として知られている。特に成人病センターは、中四国の民間病院ではじめて手術支援ロボット「ダヴィンチ」を導入し、内視鏡手術センターで特に婦人科の手術実施例は毎年1,600症例を越え、全国トップクラスだ。

 PHSを日常的に使っている多くの病院と同じように、この病院グループも、リプレース後の活用について悩んでいた。ちょうど約1年前、グループ内の「ライフタウンまび」での活用を検討していた。

ライフタウンまび

 まび、と聞いて勘の鋭い方は想像がつくだろう。20187月、倉敷市真備町は豪雨による未曾有の災害に見舞われた。76日夜から77日未明にかけ、地区の周囲を流れている高馬川、末政川、小田川などの堤防が複数箇所にわたり決壊、闇夜のうちに瞬く間に一帯を濁流が襲った。堤防に囲まれた低層地であったこの地区は、一分の隙もなく濁流を受け止めるかたちになり、まるで従前から湖であったかのように、ほぼ地区全体が飲み込まれた。地域住民の多くは逃げ遅れ孤立するか、濁流に飲まれ命を落とす悲惨な状況に直面した(のちに51人もの命が犠牲になったことが明らかとなる)。

 

 

 地区南側、井原線吉備真備駅の目の前に位置する「ライフタウンまび」も当然ながら例外ではなかった。1階はおろか2階も水没の被害に遭い、逃げてきた地域住民のケアをすると同時に、入居者・利用者を水が届かない上層階へ避難させなければならなかった。その対応に職員が当たらなければならない事情もあったが、主に1階に保存していた紙の診療録などを退避させる余裕もなく、ほぼすべてが流出するか濁流で汚染され、利用できなくなってしまったのだ。もちろん、施設内で使用していたPHSを含めた電子機器も水没し、オペレーション困難な状況に陥った。

 つまり期せずして、ライフタウンまびは、災害によってそのすべてをリセットせざるを得ない状況に追い込まれたのだ。この状況で、サービス停止が確定しているPHSを再度導入することなどあり得なかった。ここに至ってはもとの形に戻す「復旧」など意味はなく、PHSの代替となりうるスマートフォン採用を前提とするしか、事実上選択肢はなかったのである。

 2019年4月、こうしてライフタウンまびに40台のスマートフォンと、紙ベースで管理していた利用者の情報をデジタルデータで管理するシステムが、NTTドコモ、アイキューブドシステムズらの提案を受けて導入された。

 導入の理由は言ってみれば消極的なものであったかもしれない。しかし導入したスマートフォンおよびツール群は、すべて紙ベースで運用していた被災前と比べ劇的な効率化をもたらした。

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